これは、LAPRAS Advent Calendar 2022の11日の記事です。

1. 挨拶

ごきげんよう。azimicatです。東京から北海道へ移住して1年8ヶ月が経ちました。
せっかくの機会なので移住に関する諸々をまとめようと思い立ち筆を取りました。
具体的な移住検討の手法などについては「東京から外に出る人」向けに書いていますが、実際はどの地域からでもどこへでも移住して良いのだということを念頭にこの記事を読んでいただけると幸いです。

2. ここに書かれていることは?

  • 地方移住の経緯
  • 地方移住のすすめ
  • 地方に移住するには何を準備すれば良いのか など

3. なぜこの記事を?

  • 私自身が移住で充実した生活を送れるようになった(東京暮らし比)ため
  • 友人/知人に移住について聞かれることが増えた

4. 移住とはなにか?

移住という言葉を聞きなれない方も多いと思います。
ざっくり言うと移住とは、「その地域に永住するという意思を持って行う引越し」のことです。
そのため、やむを得ない理由での他都道府県への引越しは移住ではありません。
逆に東京で暮らしたくて東京の学校へ進学する場合は、「進学を機に移住を決めた」と言えるわけです。

5. 地方移住はいいぞ

5.1. 引越遍歴と今の移住先

5.1.1. 引越遍歴

東京から北海道へ移住して、1年8ヶ月経ちました。
人生スパンで見ると、
福岡(18年1拠点)→東京(4年2拠点)→札幌(2年3拠点)→東京(4年4拠点)→北海道(2年1拠点)という引越しをしています。
凡例:地域名(概算年 拠点数)

福岡から東京の大学へ進学し、札幌で就職。
転職のため東京に戻りさらに都内でもう一度転職。
転職のため北海道へ引っ越し公務員として勤務後、東京の会社に転職してフルリモート勤務。という経緯です。

5.1.2. 今の移住先について

きっかけはオホーツクキャンパスのリモート講義で、それを機に北海道に興味を持ちました。
恩師を頼りに友人と2人、自転車で初めての北海道を巡り、自然の雄大さに感動しました。
それをきっかけにして、4年をかけじっくりと北海道を巡る中で北海道を愛する旅の友人たちに恵まれ、移住という手段を知りました。
移住の決め手はいくつかありますが、「人のおおらかさ」「豊かな自然」「夏の快適さ」「花粉症の不在」が大きな理由です。

5.1.3. 移住先の紹介

北海道河東郡上士幌町という大雪山国立公園の東山麓に位置し、十勝平野の北端でもあります。面積の70%以上を森林が占める自然豊かな町です。コンクリートアーチ橋梁群やバルーンフェスタが有名です。
簡単地図
三国峠
↑三国峠
夏のタウシュベツ
↑夏のタウシュベツ

5.2. 私の移住理由

いろいろありますが、いちばんの決め手は東京に住んでいた時に聞いた老夫婦の会話でした。
週末にいつも行っていた大きなショッピングモールがあったのですが、その中にあるカフェで老夫婦がボソッと「私たち、いつもここに来ているね。」と言ったのが聞こえたのです。 あの年齢になっても、ここに住んでいると今の私のように毎週末、いずれは毎日、このショッピングモールに通うことになる……いや、通ってしまうようになるのか!と、とてもショックで、それがきっかけで地方移住を本気で計画し始めました。

5.3. 周りの移住者に聞いた「移住理由」

  • 自治体の優遇施策
    • 子育て支援がある(保育園費用が無料・高校までの医療費が無料など)
  • 地域を気に入った
    • 自然が豊かな中での生活
    • 旅行で訪れて気に入った
  • 故郷
    • 故郷へのUターン
    • 故郷近くへの就業
  • 仕事
    • 地域活性化に興味がある
    • やりたい仕事がある(酪農や農業、地域特化型の食品加工など)
    • 気になっていた地域へ希望転勤

5.4. 移住先での生活

(前職)

  • 生活スタイル
    • 基本、暦通りのお休み
    • 仕事 8:30 - 17:15
  • 休日
    • 車で遠出
    • バイクツーリング

(現職)

前職に比べて体力的余裕が出たため、休日のお出かけ頻度が上がりました。

  • 生活スタイル
    • 基本、暦通りのお休み
      • 仕事 9:00 - 18:00(コアタイムなし)
  • 休日
    • 車で遠出
    • バイクツーリング
    • 温泉巡り
    • 手芸

5.5. 地方へ移住して良かったこと・苦労したこと

5.5.1. 思いがけず良かったこと

想定外に失敗したと感じることはなく、基本的に良かったことしかないので思いがけず良かったことを挙げてみます。

恒常的な車の音や救急のサイレンがなくなった

東京に住んでいた時はそんなに気にしていませんでしたが、家の中で過ごしていても救急車のサイレンや車の通る音がずいぶん聞こえていたようです。こちらに住み始めてからは、(YouTubeでよく聞く)自然音が常に鳴っている状態で鳥の囀りと牛の鳴き声、風で葉が擦れる音、たまにトラックが通る音しか聞こえません。冬の夜には雪の降り積もる音が聞こえます。

5.5.2. 苦労したこと

新しく友人を作るのに苦労した

慣れない土地での生活で、地域に根ざした気軽なおしゃべりを楽しむことができるのは地域に住む人だけなので、これまでの友人ではなく新たにこの土地で友人が欲しいと思いました。
しかし、私が内向的なこともあり、正直に言うと職場を通じて友人は得られませんでした。
現在はSNSを通じて趣味の仲間と出会い、その中でも特に友人と呼べるほど仲良くなった人がいて気軽にご飯を食べに行ったりアクティビティに誘うことができるようになりました。

病院が遠い

街中に診療所のような小さな病院はありますが、専門外来となるとどうしても都会に出なければいけません。そうなると、片道が1時間近くかかることになり、気軽な通院は難しくなりました。また、専門外の種類・数ともに少なく、種類によっては初診予約を受け付けていないこともありました。
他に、交通手段が限られるため車の運転に必要な部分の怪我や突発的な発作の危険がある場合、また眠気を引き起こす薬を飲んでいるなどの期間は通院が難しく誰かに送迎をお願いしなければなりません。公共交通機関を利用することもできますが、3倍以上の時間をかけて通院しなければなりませんでした。

外食時に出てくる食事の量が払った金額に対して多すぎる

値段に対して、想像していた1.5〜2倍ぐらいの量の食事が出てくるので困った。2年間で胃袋を拡張し、いまはどうにかギリギリ詰め込めるようになりました。道産子の背が高いのはベルクマンの法則だけでない気がします。 大ぶりのカキフライが5個ものってこの値段
清竹のカキフライ定食:1000円。ご飯は食べてもなぜか減らない。

6. 地方移住をしたいと思った時にやること

そろそろ移住が気になってきましたね。では、具体的に移住したい時に何から考えれば良いのでしょうか。 46道府県に移住できると思うのですが、特に現在住んでいる北海道と、故郷贔屓で福岡についての事例を説明します。

6.1. 候補地調べ

東京だと東京交通会館8階(ふるさと回帰支援センター内)にたくさんの道府県の移住相談センターが入っています。まずはここに行くのがおすすめです。
「移住ってのがあるって聞いたんですけど……」という軽さで行っても無理に何か勧められることはなく、情報ぎっしりのパンフレットと一緒に(日によっては)お土産などを持たせてくれることもあります。

コロナ禍に入ってからオンラインイベントも増え、家にいながらリアルな情報を得ることもできるようになりました。
イベントは、TURNSニッポン移住・交流ナビ JOINのイベント欄ページで探すことができます。

他、SNSなどで地域おこし協力隊の方の発信をチェックしたり、移住した方の発信をチェックすると実際にどんな生活をしているのか、その地域にどんな魅力があるのか、今の季節に何をしているのかなどを知ることができます。
参考までに、私の好きな移住者のSNSをいくつかリストアップします。

6.2. 補助金確認

企業支援金と移住支援金 地域の重要な中小企業等への就業や社会的起業をする人で条件を満たす場合、移住・起業後に支援金を受け取ることができます。詳しくは内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局/内閣府地方創生推進事務局から情報が出ています。

6.2.1. 起業支援金

起業支援金は、道府県が、地域の課題解決に資する社会的事業を新たに起業等する方を対象に、以下の支援・助成を行う事業です。

  • 計画の審査、起業等のための伴走支援
  • 事業費への助成(最大200万円)
6.2.1.1. 新たに起業する場合の条件

以下のすべてを満たすことが必要です

  • 起業地の都道府県内に居住していること、または居住する予定である
  • 東京圏以外の道府県または東京圏内の条件不利地域において社会的事業の起業を行う
  • 国の交付決定日以降、補助事業期間完了日までに、個人開業届または法人の設立を行う
6.2.1.2. 事業承継または第二創業する場合の条件

以下のすべてを満たすことが必要です

  • 本事業を行う都道府県内に居住している、または居住する予定である
  • 本事業を行う地域が、東京圏以外の道府県または東京圏の条件不利地域である
  • 事業の内容が、Society5.0関連業種等の付加価値の高い分野である
  • 社会的事業を 事業承継または第二創業により実施する
  • 国の交付決定日〜補助事業期間完了日に、事業承継または第二創業を行う
6.2.1.3. 事業分野

地域の課題に応じた幅広いものに適用されます。例として、

  • 子育て支援
  • 地域産品を活用する飲食店
  • 買い物弱者支援
  • まちづくり推進

などが挙げられます。

6.2.1.4. 受け取れる支援金の額

支援金の額は上限の最大200万円のみが決まっており、起業等に必要な経費の2分の1が交付されます。
そのため、起業の手続きが全て完了し、実績報告ができるまで支援金は交付されないことに注意が必要です。
起業支援金交付までの流れ(例)

※引用元:起業支援金・移住支援金 - 地方創生|地方創生 > 起業支援金・移住支援金 > 起業支援金

6.2.2. 移住支援金

移住支援金は、ざっくり以下の条件で

  • 直近1年以上東京23区に在住または通勤する方が、東京圏外へ移住する場合
  • 移住先で起業や就業等を行う場合

という2つの条件を満たす人へ、都道府県・市町村が共同で交付金を支給する事業です。

6.2.2.1. 受け取れる支援金の額

一般世帯と単身世帯で異なり、以下のようになっています。

  • 世帯の場合は100万円以内(世帯の18歳未満の者一人につき最大30万円を加算)
  • 単身の場合は都道府県が設定する額で60万円以内

公式のフローチャートは以下のようになっていますが、もうすこしわかりやすくまとめてみました。
公式ページの移住支援金交付までのフローチャート

6.2.2.2. 支援金交付の土俵に上がるために必要な条件
  • 直近1年以上、東京23区(条件不利地域以外)に在住または通勤・通学している
  • 直近10年間で通算5年以上、東京23区または東京圏に在住している
  • 直近10年間で通算5年以上、東京23区へ通勤・通学している
  • 通勤先企業は雇用保険の被保険者である
<東京圏>
東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県

<条件不利地域>
「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」「山村振興法」「離島振興法」「半島振興法」
「小笠原諸島振興開発特別措置法」の対象地域を有する市町村(政令指定都市を除く)
【一都三県の条件不利地域の市町村】
・東京都:檜原村、奥多摩町、大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ケ島村、小笠原村
・埼玉県:秩父市、飯能市、本庄市、ときがわ町、横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町、東秩父村、神川町
・千葉県:館山市、旭市、勝浦市、鴨川市、富津市、南房総市、匝瑳市、香取市、山武市、いすみ市、東庄町、
九十九里町、長南町、大多喜町、御宿町、鋸南町
・神奈川県:山北町、真鶴町、清川村
6.2.2.3. 就業の条件

2021年度からテレワークでの移住も対象になっています

  • 地域の移住支援金の対象企業等へ就業する
  • テレワークにより現在の業務を継続する(自分の意思で移住を決めていること)
  • 市町村ごとの独自要件として認める要件を満たす
  • 地方創生起業支援金の交付決定を1年以内に受けていること。

※引用元:起業支援金・移住支援金 - 地方創生|地方創生 > 起業支援金・移住支援金 > 移住支援金

6.2.2.4. 申請期間等の条件
  • 移住支援金の申請が転入後3か月以上1年以内である
  • 申請後5年以上、継続して移住先市町村に居住する意思がある

私は移住支援金支給対象者であるにも関わらず、申請を忘れていたため貰えるはずのものをもらうことができませんでした。とても悲しいです。これに気づいたのは今年の10月でした……。

6.3. 仕事の検討

6.3.1. 起業する

起業については詳しくないので割愛しますが、
事業継承での移住や、地域おこし協力隊として、任期後自治体との取引を行う事業を起業する契約など0からでない起業という選択肢もあります。(起業とは言わないのかも。知らんけど。)

事業継承に関する情報提供を行っている企業など

6.3.2. 就職する

就職するのであれば、以下のサイトが補助金の対象です。

補助金対象であることに拘らないのであれば、一般の求人情報サイトから検索し、応募の際に移住支援金対象企業かどうか確認すると良いと思います。

地域おこし協力隊という制度もあり、公務員で3年間は任期があり、住居を提供してもらえることや、協力隊同士のネットワークがあり起業に関する情報を集めやすいことがメリットです。デメリットは検索するとたくさん出てくるので気になる方は調べてみてください。

私は地域おこし協力隊の隊員として移住しました。
その後、任期最長3年のうち1年間だけ就労し、契約満了として退職後現在の会社へ就業しました。
住居は、協力隊員として賃貸契約していたアパートを自治体担当者と相談の上、個人名義に再契約し今も住み続けています。

6.3.3. 現職のままリモートワーク

  • 光回線が設置できるのかどうかを必ず確認する リモートワークの場合はインターネット環境が必須かと思います。
    提供エリアをあらかじめ確認してから、住希望地域のどのエリアなら住むことができるのか検討する必要があります。
    回線速度を重視しないのであれば、モバイルwifiやstarlinkも候補に入れることができます。

  • 昼間の環境について確認する (都会でも同じではありますが)集合住宅の場合は上下左右の部屋に昼間うるさくなる要因がないかどうか確認する必要があります。また、近くの土地に工場があったりすると、離れていても意外と音が聞こえてくることがあります。実際に足を運んで確認するのが一番でしょう。

6.3.4. 無職

資産が豊富にあるならば別ですが、どうしても移住したい地域があり当面の資金があるならば熱量を持って移住してしまうのも良いかもしれません。実際そういう方はいますし、地域の方と積極的に交流することで仕事を斡旋してもらえることもあります。ただ、望む仕事があるかどうかは運次第であり、いつか資金が尽きて止むを得ずに都会に戻らなければならなくなる覚悟も必要です。
その場合、必要な資金の目算をする必要がありますがe-Statなどを参考にしつつ、実際に足を運んでその地域の家賃とスーパーでの食品価格などを確認すると良いかと思います。
e-Statでは項目定義を参考にしつつお好みで、このように統計データを抽出して閲覧できます。 e-Statの検索結果画面

7. 移住が決まったら

これは次回何かの機会に書きたいと思います。
内容としては、

  • 引越し業者選定
  • 車やバイクなどの引越し
  • 親族への説明
  • 友人への説明
  • 退職手続き/入社手続き

8. 最後に

このように、移住にはさまざま手段があり移住する人の理由も多岐に渡ります。
軽快に住処を変えられる身軽な方は「移住」と肩肘を張らず、気になった地方に目下の期間を決めて「引越し」するのもひとつの手だと私は考えています。
また学生であれば、IUJターン就職の際に支援金を受け取ることができるかもしれません。
この記事が誰かの移住の一助になれば幸いです。最後まで読んでくださってありがとうございました。

9. 謝辞

リモートでの就業環境を提供してくれるLAPRAS(株)、移住に理解を示してくれた両親、遊びに来てくれる友人たち。
そして何より、移住に快諾してくれたパートナーに心から感謝します。